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心汰の冒険

2010,3,11...設置

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スコリノで動作のお題
鼻をすりつける





自我が失われていく

少しずつ 着実に





スコールの記憶障害は日増しに酷くなっていった。異変は、毎晩偏頭痛に苛まれるようになったあたりから始まっていた。今では頭痛を感じず、その代わりに記憶の殆どを欠損。

もう、愛する人の記憶は愚か、己の名前すら思い出せない。彼の記憶障害はここまで重症だった。

「スコール、服着替えなきゃ。もう寝るでしょう?」

「・・・・・・。」

リノアの呼びかけに反応することなく、窓際の椅子に腰掛けている。腕はだらしなく垂れ下がり、生気の抜けた姿。こうなる前の彼からは想像もつかないような姿だった。

瞳はぼんやりと月灯りを映している。もう仲間達と任務を請け負うこともない。外出することもなくなっていた。外の空気を吸う時には必ずリノアが同伴しなければならない。一人では歩けないのだ。歩く、という動作もままならなかった。

記憶障害は、生活する上で必要なあらゆるものを奪った。知識を奪い、動作を奪った。スコールはもはやリノアなしでは生活ができない。

こんな風になってしまっても、彼女は彼に対して以前と何ら変わらない献身的な愛情を注いでいた。いや、こうなる前よりも愛しさは増したかも知れなかった。

「(スコールは大きな赤ちゃんなんだから、私がちゃんと大人になるまで育てなきゃ。)」

リノアはそんな風に思っていた。彼の体は大人に近いが中身は恐らく生まれたての赤ちゃんか、もしくはそれよりも……。それ程に退行してしまっている。

「スコールー、ばんざーいしてー。」
「・・・・・・。」

声をかけながら彼の上着を脱がす。当然何の反応もないのだが、彼女の動作に合わせて視線だけは、彼女の仕草を追うようにゆっくりと動いている。

「よしっ、脱げた!じゃあ次は汗拭こうね!」

風呂に入れるのは多大なる体力を消耗するので、二日に一度と決めてあった。少し可哀想な気もしたが、男性陣に任せることはできなかった。彼の全ての世話を自分がすると皆に宣言したのだ。意地があった。

曝け出された半身を丁寧に、湯に浸して湿らせたタオルで拭っていく。首筋、肩、腕、脇、胸板、腹、背中、くまなくだ。

やはり、以前に比べて筋肉も落ち、随分と痩せてしまっているが綺麗な体であった。

こうなる前には、こんな風にまじまじと見ることの出来なかった彼の体。今はいくら眺めていても彼の表情が変わることはない。

ぼんやりしたままの恋人を見つめていると物悲しくなってしまう。けれどリノアは笑顔を忘れなかった。

「綺麗になったね!さっぱりしたかな?顔も拭こうね。」

真新しいタオルに交換し、彼の頬にそっと触れる。温かで、柔らかな肌。やはり彼はちゃんと生きている。なのに瞳は虚ろで力無い。

「・・・・・・。」
「スコールはかっこいいね。」

そう言って笑いかけてやる。反応はなくともコミュニケーションは欠かしたくなかった。リノアは彼の顔を慈しむように優しく拭っていった。





「服も着替えたし、寝よっか。アンジェロ、おいで!」

リノアが呼ぶと、おとなしく床に伏せて二人の主人を見守っていたアンジェロがやって来る。

「スコールにおやすみの挨拶してね。」

アンジェロがベッドに上がり、毛布から出されたスコールの手の甲をぺろりと舐める。これが“おやすみの挨拶”だ。

そして、それが済めばアンジェロは自ずからベッドを離れ、その下で身を丸めて眠る。

「おやすみ、アンジェロ。」





部屋の灯りも消え、暗がりのなか、二人は寄り添いながら眠る。リノアがスコールの腕に頬をすり寄せて眠るのはずっと変わらない。

頼りなくなってしまったとしても、筋肉が落ちて体力も落ち、これからもっと見窄らしくなっていくのだとしても、彼女は彼に甘えようと思っていた。自分が彼を頼り、そして甘える。甘えさせてやれるのもそれはそれで幸せなのだが、スコールの幸せはきっと……そう考えて。

「私、幸せ者だなぁ。だって、毎日こうしてスコールのお世話ができて、一緒に眠れるもの。」
「・・・・・・。」
「もうね、ずっとこのままでもいいかとすら思うの。……ごめん。それはダメ、だけど……。」
「・・・・・・。」
「無口なのは前と変わらないもんね?」

リノアは、ふふ、と笑う。スコールはいつも通り笑わない。今はきっと、笑わないのではなく、笑えないのだろうが。

「はぐはぐぎゅってしてね。」

そう言って、彼の腕を自分の体に巻き付けるようにする。






すり……

「……?」

すり……


ハグされている格好で、首筋に触れている彼の鼻先がゆっくりとそこを撫でている。まるで猫が甘えるときのような仕草だ。


「スコール?」


物言わぬ彼だがもしかして、何か思うところがあるのだろうかと淡い期待がわいた。

「もしかして、スコールも甘えてるのかな……。」

これが彼なりの応えならばこれは何を意味するのだろうか。

スコールはこうなりたかった?

リノアは考えた。

「スコールは、甘えたかったの?」
「・・・・・・。」
「もしかして、記憶障害が酷くなったのも、あなたがそうしたいと願ったの?」
「・・・・・・。」
「記憶を失くして、何もかもを白紙に戻して。」
「・・・・・・。」

リノアはスコールの大きな手をとり、その手で自らの髪や頬を撫でた。

「……戻っておいで?私、寂しい。スコールに名前、呼んでもらいたい。こうして触れてほし…………。」

言葉にならなくなり、今確かにある身近な温もりに縋り付く。スコールはそんな彼女の心情を知ってか知らずか、また鼻先をすりすりと擦り付けていた。





おしまい



鼻をすりつけるお題がよく分からずなぜこうなったかも全然分からない。この後の話を考えてなかったけどもちゃんとスコールの記憶は戻るということにしたい。リノアのことも思い出すし、自分のことも皆のことも思い出す。スコールがリノアを寂しい想いさせたまま、なんてイカンイカン。しっかりするんだスコール!!

ただ、記憶を失って真っさらになったスコールは純真無垢だから、ふと笑顔を見せたりすることもあるのかなぁと思う。そんなスコールを見ているとリノアもホッとするんだろうなとか。理由もなくニコニコしていたりするスコールを見て可愛いなと思ったりするんじゃないかなとか。

いろんな想像を巡らせた。

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